11月5日 高栄養飲料

11月5日 月曜
栄養士に高栄養飲料を勧められる。

父は入院してからは3食、わずかながらも口にしていた。
全がゆととろみをつけたおかずというメニューで、食べてせいぜい2、3割というところ、あとは私がたいらげていたのだけど。

この日、病室を訪れた栄養士に、動かなくても基礎代謝の分があるからカロリーが足りないといって、ドリンクにゼリーなど高栄養食品を紹介された。サンプルをいくつかもらい、ドリンクを朝食に1本、出してもらうことにする。

テルミールというやつでいちご味と抹茶味がある。フルーツ牛乳ないしは抹茶オレのような味らしい。125mlで200kcal。栄養素もプラスされている。ダイエット食品はいかに食べごたえがある割にカロリーが少ないかがウリだが、まったく逆のニーズがあり、それに応じた商品があることを初めて知った。飲み込むことも辛い病人やお年寄りが、少量でカロリーはじめ栄養を摂ることができる。

退院後も毎朝1本ずつ飲んでいた。
病院内のローソンに売っているテルミールを外来のたびに買い占めない程度に仕入れた。あとは近所の薬局にあった同様の商品、メイバランス。品薄なので入荷日を尋ねて買いにいったほど。メイバランスの方は味が7種類と多く、コーヒーやらバナナやらいろいろ試してみたりもした。

栄養士に渡された通販カタログを見て驚いたのだけど、この病人食・介護食の世界がこんなに多彩とは。テルミールやメイバランスのような高栄養食品、飲み物やおかずにとろみをつける粉、柔らかいおかずやおかゆのレトルト食品。なかにはムースで作ったおかずのセットまであった。さばの味噌煮にきんぴらごぼう、ニンジンの煮物、というメニューがすべてムースになっている。さば味噌はお魚の形に、ニンジンは花形に形づくってある。鮭やたらなど、ちゃんと皮のついた切り身に形づくったムースまである。

その後、この市場が拡大しているという新聞記事をいくつか目にした。メイバランスは新聞広告で見かけ、最近ではテレビCMも登場した。父のことで初めて存在を知って目にとまるようになったということもあるけれど、まさに急成長するタイミングだったのだろう。

たとえばこんな記事。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2013091802000145.html

今までは施設向けが中心だったけれど、在宅介護が拡大見込みで家庭用にシフトしているようだ。今は薬局が中心だけど、これからはスーパーにも並ぶようになるのだとか。
通販カタログを見ると、食品メーカーから医療系まで各社参入している。テルミールはテルモだし、メイバランスは明治。家庭用シェアトップはキユーピーだそうで(@東京新聞)、ほかにも味の素、大塚製薬旭化成ファーマカゴメマルハニチロネスレハウス食品、等々。味と見た目、栄養に食べやすさと、食品加工技術を駆使できそうだ。

業務用より家庭用の方が単価が高くなるし、付加価値もつけやすい。マーケティングの仕方も変わってくる。ドラッグストアでは、レトルト離乳食のラインナップに驚くけれど、こちらの方がよっぽど大きな市場なのだろう。高齢化でそもそも必要とする人が多いし、使う期間も長い。離乳食と違って、いつまで、という先が見えないから、在宅で作り続けるのも、より大変だ。

それに、胃ろう(お腹に穴をあけて胃に直接、食べ物を入れる)への拒否感がクローズアップされていることも影響するのではと思う。単に胃ろうはイヤだと避けると、点滴に置き換わるだけだったり、まだ生命力がある状態なのに栄養不足になったりしかねない。こういった食品が使いやすくなれば、飲み込む力が落ちても口から食べ続けること、胃ろうや点滴を経て再び口から食べることが出来て、気持ちの面でもずいぶん違ってくるのではないかと思う。