聞き流せない話

 特集の編集作業が佳境に入る週には、静岡の母に2泊3日で来てもらい、子どもの世話を頼んでいる。校了翌朝は、一人暮らしの母の話し相手を務めるのが常だ。
 先日もそうして相づちを打っていると、話の中身にどうも引っかかる。「S銀行から保険を乗り換えるように勧められているんだけど、断ったら悪いような気がして。前のはもう増えないからって言うのよ」。
 まさに前夜まで取り組んでいたのが保険特集。しかも勧められているのは外貨建て一時払い保険ではないか。問題点を示そうとしたが手が回らなかった。
 某保険会社の説明会で担当者は「もちろん為替リスクはあります」とのたまった。ただでさえ心配性の母に、為替という厄介事を増やしたくない。父の遺したお金を「置いておければいいの」という母の思いに低金利下で沿うには、口座手数料の方がましではないか。

 

(『週刊エコノミスト』2018年12月25日号 編集後記)