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「日本沈没」させない

 1月に、編集部の先輩の強い薦めで『日本沈没』(小松左京著)を読了した。地殻変動で日本列島が海中に沈む――。それを予測した研究者らが退避計画を進める物語だ。
 東日本を地震津波の大災害が襲った。かけがえのないものがあまりに多く失われたことと、今なお直面する危機に慄然とする。『日本沈没』では、日本国民は母国を失い、世界各地に散り散りになる。今回、故郷を失った人々の地域は東北の海沿い、田舎だ。人とのつながりも含めた暮らしをどう再建できるのか。長く、息切れしないように歩いていく道の始まりでもあるのだと思いを馳せている。
 3月で契約可能期間満了のため編集部を去る。在籍した2年半あまりの間、大勢の方にお話を伺い、そこから執筆していただいたり、私が記事を書いたりしてきた。直接でなくても、企画や記事に反映された要素もある。
 残念ながら、誌面上で読者の方へ渡すことが出来たものは、出会った方々から受け取ったすべてではない。受け取ったものを自分の中で役立てるだけではいけないような気が勝手にしている。今後、『週刊エコノミスト』と立場や形は違っても、誰かに渡していきたい。ありがとうございました。

(『週刊エコノミスト』2011年3月29日号編集後記)