Uターンならぬ孫ターン

 山口県への移住相談に携わる友人の誘いで先日、東京国際フォーラムで開かれていた「やまぐち暮らしフェア」へ出掛けた。各市町がブースを出し、暮らしやすさや移住支援策をアピールしたりしている。
 スタッフTシャツを着た友人に、若い男性が声をかけた。周防大島に祖母の畑があり、将来的に移住を考えているという。すかさず友人がつないだのは、先ほどトークセッションに登場した周防大島で手作りジャムの専門店を開いて注目されている移住者だ。「孫ターンの方、お見えです」
 孫ターン? なんでも祖父母の地元に孫世代が移住することを指し、移住かいわいで定着してきた言葉という。背景には、都市部での子育てや働き方への違和感があるようだ。
 折しも8月15・22日合併号の担当特集「みんな土地で困っている」で、親が遺した田舎の家や田畑を持てあますという話をよく聞いた。都市部で長年働き、居も構えた中高年にとってUターンは選択肢にないかもしれない。ただ、厄介者の家や田畑も、見る目が変われば転機の縁、新生活のインフラになると気づかされた一幕だった。

 

(『週刊エコノミスト』2017年9月5日号 編集後記)