甘えへの喝

 取材先の言葉に凍りついた。「資料をちゃんと読んできたのか。サービスを使ってみたのか。それならそんな質問はしないはずだ」。準備不足は明らかだった。「こちらは時間を割いている」。席を立つ背に頭を下げるしかなかった。
 読者の代わりに尋ね、伝える。それが記者の役割だが、専門家や企業の方々に「一から教えてもらえばいい」と甘える姿勢があったことを思い知らされた。それに、今はもう、媒体を通じてしか発信できない時代ではない。なのに「上から目線」が染み付いたままなのではないか。
 かといって、生半可な情報や先入観は禁物だ。下調べの上で、取材の場には白紙で臨む。そんな心構えが薄れていた。
 だが、今度は「相手の時間をいただくに足る準備ができているか」と省みるあまり、取材申し込みに踏み出せなくなった。それでは本末転倒だ。入念に、かつ果敢に。

 

(『週刊エコノミスト』2016年12月20日号 編集後記)