運転なんかしたくない

 車の運転が苦手だ。それなのに、地方で取材していた5年間は不可避だった。あちこちぶつけるのは日常茶飯事、「人に危害を加えてしまうような事故を起こしませんように」と毎日、神様に祈った。東京に来る前に車を手放すと、肩の荷が下りた心持ちがした。交通事故のニュースは、ドライバーに思いが向いてやるせない。
 だから、完全自動運転の時代が心底待ち遠しい。これほど技術の進歩がありがたいと感じるものはない。
 6月28日号の自動運転特集を担当した。自動車会社の人や取材班の男性陣は、運転することへのこだわりが強いようだ。「運転なんかしたくない」との思いを一人くすぶらせていた。
 行きたいところへ自分で行けるのは、とても自由だ。車の魅力はそこにあるのではないか。「いずれ車の運転は、大型二輪のように趣味の一つになる」との見方に一票だ。

(『週刊エコノミスト』2016年7月5日号 編集後記)