車両工場で目にしたもの

 この号の取材でヘルメットを被ること5回。各社の車両工場や研究施設にお邪魔した。説明を聞きながら必死に観察する現場で、目の隅、耳の端に止まったことが印象に残っている。
 タイ・バンコク、パープルラインの車両基地でのこと。案内役の総合車両製作所の方が、被っていたヘルメットを車両内で布帽に替えた。内装を傷つけないためだそうで、タイ人の鉄道会社スタッフにも伝えていた。
 工場ではあちこちに標語が。
 日本車輌製造豊川製作所。「品質こそ生命」「掃きとれ、吸い取れ、切粉取れ」。
 東芝府中事業所。「意地はらず 他人の忠告 素直に聞こう」。安全に限らない至言だ。
 川崎重工業兵庫工場。「気をつけよう 覚えた時より慣れた時 初心を忘れず 安全作業」。終業時間が過ぎた頃、工場から帰路につく一人が道路を渡る時、左右を指差し確認する姿があった。

 

(『エコノミスト別冊』2016年5月 鉄道)