よみがえる絶版本

「良い本があるけれど、絶版で読者が手に入れづらいかと思い、やめました」。黒木亮さんがこう仰ったのは、2009年末発売号「経済小説作家の本棚」で書評を執筆いただいた際のこと。“絶版”の言葉が気にかかり、「今度はぜひ、絶版本に限った書評をお願いします」と返した。
 あれから6年。8月11・18日合併号にて「よみがえる絶版本」として復刊ビジネスの動きと併せ、形にできた。助言を仰ぎ、執筆いただいた黒木さんは「良い本ほど絶版になる」という。
 ひとり出版社で復刊を手がける夏葉社の島田潤一郎さんは「良い本は売らなければならない」と訥々(とつとつ)と語る。電子書籍で半永久的に残せたとしても、そのままではネットの海に埋もれてしまう。掘り出して伝えるのは、やはり人。口伝で物語が受け継がれた昔から印刷物、そしてデジタルとなっても変わらないのかもしれない。

 

(『週刊エコノミスト』2015年9月1日号 編集後記)