15.綿毛ふわふわ

リトアニアのカウナスで最初に気づいた。公園をふわふわ白い綿みたいのが舞っている。拳より小さいぐらいの大きさ。タンポポの綿毛にしてはでかい。鳥の巣、蜘蛛の巣にしては白い。鳥の羽にしては丸まっている。なんだなんだ?

その後、あちこち緑の多いところで見かけ、ようやくモスクワで先輩にポプラの綿毛だと教わる。モスクワの初夏の風物詩だそうです。夏の雪、とも言われるらしい。
眺めている分にはいいけど、けっこう大量に飛ぶので、うっかり窓を開けようものなら家のなかにたまって大変らしく、おまけに花粉症のような症状もあるのだそう。
言われてみてみると、白い綿毛を蓄えた木が多かった。

ポプラのロシア名はトーポリ。これ、ロシアの弾道ミサイルの名でもある。一説には、第二次大戦後、焦土と化した国土を緑化するのに何がいいか米国に聞いて、育つのが早いと勧められたのがこのトーポリ。一気に広がったけど、その後この綿毛問題が大変になって、米国への意趣返しにミサイルに名付けられたとか何とか。真偽不明。

ラスト、脈絡ないトピック総ざらえでいきます。

■悪目立ちサムスン

バルト3国はどこも旧市街に趣のある建物が並び、離れたところに近代的なビルとはっきりエリアが分かれている。日本だと、京都の街中もマンション混じりだし、景観を保つにはやっぱ線引きが必要だよな・・・と思う矢先に目の先に飛び込んでくるのがサムスン(SUMSUNG)の看板。境目にあるので旧市街での町歩きの最中、視界に入る。写真にも映りこむ。単に高層ビルというだけならほかにもあるけど、一番うえに会社名を掲げてあるのがほんと悪目立ち。絵葉書や旅行パンフレットの写真撮るのも大変だろうな・・・。


モスクワでは、クレムリンの入り口の向かいの建物に見下ろすように看板が陣取る。クレムリンへ向かう陸橋にはLGの旗がたなびいていて、目立つ場所はこの二大韓国企業に占められていた。ドストエフスキー先生(の像)がたたずむ国立図書館の真後ろにもSUMSUNG看板がどどんと。日本のパナソニックとかはもうちょっと外れで、勢力図を感じさせる一幕。

最も日本企業の看板が目に入ったのはワルシャワ駅前だった。ブリジストンにリコー、シャープといったところ。

■日本人だけじゃない

かつて、日本人観光客の海外での行動を日本人が揶揄して、カメラぶらさげて写真ばっかり撮って、ガイドブックとにらめっこ、英語は話せない・・・などと言っていたように思うけれど、改めて見てみると、各国の観光客が似たようなことをしている。カメラどころか、最近はビデオ回している人も多い。ニコンキヤノンソニー率かなり高し。

ガイドブックは、ないとどんな場所なのか分からないよなと思う。現地の駅やホテルで手に入れた地図を1枚持って歩き回るのは楽しいんだけど、建物の位置と名前は分かっても、どんな場所なのか説明がないので、日本語の地球の歩き方と突き合わせてからの方が分かりやすい。
唯一、説明があったのはタリンでもらった地図で、1人のエディターが個人的な視点も交えて文章を書いている。「ここはオススメ」なんて、地球の歩き方にはないような、さりげないスポットも紹介していて使い勝手がよかった。

持っている地図で旅も変わる。逆に、自分の街をもっと楽しんでほしいと思ったら、いい地図を作るのが一番なんだなと思う。

しかし地球の歩き方で各国の風習まであれこれ書かれているのを読んでいると、日本ってどうやって外国で紹介されているのかなと思う。「テルマエ・ロマエ」までいかなくても、電車は列に並ぶ、とか靴を脱ぐとか、当人たちには当たり前のことも注意事項になっているんじゃないかな。LONELY PLANET日本版の、翻訳とか読んでみたい。もう出版されていそうだ。

英語は、どこでもけっこう通じないことがあって(我々が下手だというのはさておき)、特に顕著だったのはモスクワ。観光地でも「チケット」すら不可。ロシア語オンリーな人が多かった。先輩の「それは裏を返せばロシア語だけでも生きていける、ということ」という言葉に納得する。1億4000万人の人口がいて、経済・科学・文化のレベルも高い。なんでもロシア語に翻訳されて、ロシア語で専門書まで読める。それは日本にも通じること。

韓国しかり、北欧しかり、母国語でなくても英語を話す国の人たちは、自分の国が小さくて、英語を話せないとやっていけない、いい仕事にはありつけないということでもある。今、日本でやたら英語とかグローバルとか言われているのは、日本もそうなりつつあるということなのだろうか。
常々、「英語話せるといいことある」じゃなくて「英語話せないとひどい目にあう」という、ちょっと脅迫っぽい言われ方がなんかやな感じだなと思っていた。自分の英語コンプレックスをさらけ出すようで言えなかったけど。

それと英語は必ずしも鉄板の世界共通言語ではないのかもしれないと思い至る。
街中の表記とか名所の解説板でも、自国語+英語、とは限らない。
バルト3国は、南の方だと自国語・ドイツ語・英語、北のタリンだとエストニア語+ロシア語。ポーランドポーランド語+英語+ドイツ語が多かったような。
ポーランド〜バルト3国では、街中で困っていると、たいてい若者が「May I help you?」と声を掛けてくれる。ちょっと上の世代になると、トラムのチケットとか何か教えてくれるのも身振り手振り。どちらも親切なのは同じだけど。冷戦後に英語教育を受けた世代とそうでない世代で違うのかもしれない。

スマホ中毒の人々

今回の旅で日本人観光客はほとんど見かけなかった。アウシュビッツの同じグループの人たちと、リーガで食事した人ぐらい。あと、ヴィリニュスの名所で中高年の団体さんと一緒になった。女性25人、男性5人といったところ。さらに男性5人の内訳は、妻連れ(妻に連れられている?)3人、おひとりさま2人。女性同士は連れだって来ている感じ。中高年の行動パターンが垣間見える。

だいたい、アジア人っぽいと思って近づくと、しゃべっている言葉は韓国語か中国語。フランスでもそんな感じだったけど。モスクワのホテルの朝食では9割方、中国人で、しかも全員(←誇張ではない)、スマホやらパソコンやらタブレットやらをいじっているのには驚いた。仕事ではないっぽい身なりの二十歳前後とおぼしき若者たち。画面もアイコン+コメント、でツイッターorフェースブックのような感じ(さりげなく後ろから目を走らせてみた)。同じテーブルでも会話なし。
これって中毒なんじゃ・・・。
日本人だけでなく、欧州人も旅行者は中高年がほとんどだったけど(除くアウシュビッツ)、中国人は若者ばかりだった。そんなに貧乏旅行でもない風情で、中国では若者のほうがお金持っているのだろうか。

■小銭じゃらじゃら

最初のポーランドが存分に飲み食いして2人でなんと1300円、北に上がるにつれだんだん高くなって、タリンで日本よりやや安いぐらい、モスクワは日本を越していた。
都合6カ国回って、7種類の通貨が財布のなかに氾濫。フィンランドエストニアがユーロだったものの、ルーブルに両替しやすいということでドルと、あと日本国内用の円。レートも頭のなかでこんがらがるし、ヨーロッパは全部ユーロにしてくれ!と毒づきたくなった。国境渡るたびに使い切って(無理だけど)、両替しないといけない。カードがどこでも使えるものの、バスを降りてすぐにトイレに行きたいのに小銭が必要な時とか最悪です。旅行者の勝手な言い分ですが。でも、ユーロから元の通貨に戻ることはあっても(ギリシャドラクマとか?)、ユーロが広がることはないんだろう。

トイレといえば、ヨーロッパはトイレに入るのにお金を払うところが多い。今回もエストニア以外はほぼそうだった。電車の自動改札のようにお金を入れると入り口のバーが回るというところもあって、急いでいる時に限って小銭がなかったりして焦る。人がいるところでは、お金を払うとトイレットペーパーをぐるぐる巻き取って渡してくれたりします。
あるとき、夫が「入り口で大か小か聞かれた」という。料金が違うらしいんだけど、大が未遂に終わったり、小のつもりが大も、という時もあるよな、と思ったり。

・・・最後、シモの話で〆てしまった。