6.奇妙な和食

世界中どこにでもあるのは中華料理屋とインド料理屋だという。
スコットランドではカレーが我々を救ってくれた。イギリスに多いのは植民地時代に由来するというが、当地の料理には影響を与えることなくオアシスとして存在したのだろうか・・・(←しつこい)

今回の旅では、双方あまり見かけないかわりに(救いを求めて探す必要がなかったけど)、よく見かけたのがイタリアン。洋風なので一見、区別つかないんだけど、ピザとか出してる。
そして、我らがジャパニーズ。どこの街でも中心部に1軒はあったような。

外の看板をながめると、メニューは巻き寿司(ロール)にニギリ、キムチにヌードル・・・。たいていコリアンとチャイニーズが混じっている。タイ料理風もあわせたアジアンになってたり。「焼き鳥」と掲げた店もタリンにあった。
写真の店「kabuki」はリーガです(夫撮影)。

毎回、嘆息しながら通り過ぎていたけれど、どんなもんなのか試してみたいという邪念もよぎる。そして、ついに、日本食ブームというモスクワの原宿(にぎやかな歩行者天国の通り)で突入。ガイドしてくれた夫の先輩も「気になってるんだけど、機会がなくて」と乗り気だった。

テラス席を見回すと、昼間から徳利とお猪口でSakeをたしなみながらチェイサーにビールを飲むロシア美女・・・など。アジアの旅行者が郷愁から入るのではなく、ジモティ向けみたいです。

頼んだのは、まわりがサーモンで、具にチーズとミカン(缶詰のみたいなやつ)が入った巻き寿司。「一番極端なもの」という先輩のチョイスです。
感想?ご想像におまかせします。
写真、撮った気がするけど見あたらない。外観も想像で・・・。
食べられないことはないけど。ないけどね、わざわざミカン入れんでも。サーモン&チーズのまったりしたところを、ミカンの甘酸っぱさがさらに乱す。

メニューをみると、巻きも握りもサーモン中心。すべて裏巻きでノリの姿はない。あまりノリ好まれないのだとか。
いまやカニカマを使ったのがカリフォルニアロール、サーモンとチーズだとフィラデルフィアロールで定着してるらしい。どこが日本食、なのか。巻き寿司はノリで巻いてあるから手でつまみやすくて、とか、太巻きの具のハーモニー、だとか、アジにおろししょうが乗せた握りが一番、という私のなかの寿司ではない別世界なのね・・・。

おまけに、サーモンと厚めのクレープを巻いてたりと、もはや寿司飯さえ使っていないロールもある。いったい巻き寿司の定義ってなに?「ロール」だから、巻いてありさえすればいいのか?
日本だと生まれ得ないような、固定概念を離れた新しい食に発展している・・・と先輩は割と肯定的だったけど、確かに私もアボガドは寿司飯にあうと思うし、レタス巻きはアリだけど、それを言いだしたらツナマヨもなんなんだということになるけど、でも、寿司らしい寿司のよさってあるよなぁというコンサーバティブさが抜けきれない。まぁ、本場・日本のローリングこと回転寿司でも、お肉乗せたり、独自の進化を遂げてますけどね。

醤油はまぁまぁいける。わざわざ「うちは薄めてません」と断り書きがある店もあるというから、なかには薄めているとこがあるんだろう。醤油はたいてい中国産で、日本食の店もたいてい中国韓国系の人々が経営しているらしく、「和食ブームなのに、日本はまったく儲かっていない、というか関わっていない」のが現実だそうです。「ブームを機に、本物の日本食を広めよう」という動きも日本にあるというけれど、どれだけ効果があがるのかは疑問。

店の天井は漢詩の巻物風で、その合間になぜか「根気」「自由」と大書してありました。
この2つはロシアにもっとも縁遠いモノでは・・・というのはまたの機会に。

帰ってきたら、ビックコミックの「築地魚河岸三代目」で、「江戸前寿司に鮭はアリか」がテーマ。スーパーでは、サーモンでチーズとキュウリを具に寿司飯を巻いたやつに「ROLL」とシールが貼ってあった。