玉虫色とはどんな色

 2月3日号の「問答有用」でインタビューした宮本博司さん。国土交通省淀川河川事務所長として住民参加の河川整備を目指し、退職後は淀川水系流域委員会の委員を務める。「自分が正しいと思い込むのは苦しい。なるほどと思ったら修正するほうが、よっぽど自然で気持ちが楽」との言葉が心に残る。
 その際に「分岐点」と話していたのが淀川水系の大戸川ダムを巡る動きだ。流域委が不適切と意見し、滋賀県大阪府京都府の知事が河川整備計画から除くよう求めた。
 3月31日、「大戸川ダム凍結」のネットの見出しに、思わず「お〜」とつぶやいた。変わったのか、と。だが、よくよく報道や国交省の発表を見ると、計画本文にはダムが位置づけられ、工事に取りかかれるのはどのみち先。知事次第で着工−−の含みを残す。
 かつて佐賀県で「新幹線の着工は決まったが認可はされず」という決着を取材した。記者会見で知事に拙くかみつき、かわされた。3年後、着工認可の報を苦い思いで読んだ。
 宮本さんは「先々残る文に『やる』とあるのに、口では『やらない』と答え、矛盾している」と話す。一般には「ダムが止まった」と思われているのだという。玉虫色に見えるなかで、確かに進むものがある。

(『週刊エコノミスト』2009年5月26日号編集後記)