電車ひと模様

 この間まで、佐賀、徳島と人口80万人規模の県で記者の仕事をしていた。通勤も取材も移動はクルマ。ラジオが友達だった。
 東京では電車の移動が主だ。都会には情報があふれているというが、電車の中も例外ではない。乗客の様子、とりわけ何を読んでいるのか、あるいは見ているのかが気になる。吊り広告にも見入ってしまう。昼下がりには聞くともなく近くの会話が聞こえてくる。
 結婚式を控えているらしい男性がぼやく。「予想以上にお金かかるんですねぇ。カノジョは希望がいろいろとあるんですけれど」「女のモンだからな。無理してでも言う通りにした方がいいぞ」。背伸びすると、あとあと大変では…と、心のなかで余計なおせっかい。
 奥様がため息をつく。「息子がバイトしたがっているけれど、勉強に差し障ると思って」「社会勉強じゃないかしら」「目先の時給800円より、将来たくさん給料が入るように勉強した方がいいって主人は言うのよ」。なんだか世知辛い。
 こちらはお説教。「オマエの企画はなんだ。××社ごときの商品を並べるなんて」。どこで××社の社員が乗り合わせているかとひやひやするが、人のフリ見て我がフリ直せ、だ。
 8月に編集部に入りました。

(『週刊エコノミスト』2008年9月30日号編集後記)