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11月11日 面会

11月11日 夫の父母が見舞いに来てくれた。

あと1カ月だと言われて、誰に会っておいた方がいいのか考えなければならなかった。そうすると、やっぱり本人に聞いた方がいいのではないかという迷いに何度も戻った。
誰に会っておきたいんだろう。誰に会いたいんだろう。
会っておかなければならない人は誰だろう。
取り返しのつかないことを推測で判断しなければならない。
それに、父に、相手に面会のことをどのように伝えればいいのか。

入院した翌日に、大学の恩師の先生が見舞いに来てくれた。
同窓会に欠席した父を気遣って遠方から来てくれることになっていたが、それが入院した後にあたった。私は席をはずしていたが、別れ際に戻ると、父は少し涙ぐんでいた。

入院中、叔父叔母が訪れた。そもそも相続の相談で会う必要があったから、理由など考えずに済んだ。

自分の義父母は、どちらかというと父のためというより、私のためだったのかもしれない。会っておいてほしい、という気持ち。見舞いに来てくれると言うから、と父に伝えると、緊張する、とつぶやいた。実は義父母には来てくれるよう頼んだようなもので、行っていいのか、とためらっていた。

病院への見舞いになる予定が、退院したので家で迎えることになった。父には工場の案内もしてもらった。こうやって生きた人だというのを知ってもらいたかった。会話は兄が加わってくれたのでよかったが、父を疲れさせてしまったかもしれない。
こんな時の見舞いは来る方も掛ける言葉が難しかっただろうと思う。

一番悩んだのは、施設で暮らす祖母だった。
お袋、と頼ったり甘えたりするところはみじんもなかった父ではあるけれど、母親なんだから、ひと目会いたいはず。会うには連れてきてもらわなければならないから言い出しにくいかもしれない。でも、自分の衰えた姿を見せたくないのではないか。わざわざ祖母を連れてきたら、いよいよ死ぬのだと突き付けることになりはしないか。

母は、反対した。
祖母が父の姿を見て取り乱したりしては、父も辛いだろうという。
兄は、父がどう思っているか聞いてみるべきだと言った。
でも、それをどう切り出せばいいというのか。
母は、父に聞くことにも反対した。

祖母には、父が入院したこと、退院して家で静養していることを伝えていた。
それまでは毎週末、顔を見にきていたのに、どうして来ないのかと思っていたのかどうか。退院して家にいる、ということで安心していたようだった。

ある時、父が、祖母の施設に電話をかけて、祖母につないでもらってほしいという。父に代わると「また顔を見にいくから」と言っていた。あぁ、会わせなくていいのだな、と迷いは消えた。

自宅療養の困りごとは、家を訪ねる人を断るわけにはいかないところ。何も知らない相手はいつも通り入ってくるから、リビングに寝ているところに出くわす。応対せざるをえない。
「こんなになっちゃって」「がんばれよ」。無神経な言葉に、思わず「がんばっていますから」と返した。
父からは怒られたけれど、末期だと言ったから来たのでもないし、ふらっと訪れそうな人にあらかじめ「来ないで」と言っておくこともできない。入院なら、病院や病室を知らせなければ済む。何か手立てはあるのだろうか。