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8.とんがりビル

今回の旅の二大目的は
1.アウシュビッツ(夫が行ってみたかったからと言うので)
2.モスクワ(夫の先輩が赴任してるのと、夫が学生時代に旅したのと)

完全、夫の希望。夫の休みだし。
単なるツアーコンダクターですワタクシ。

あとはその周辺を、ということで、最初はモスクワからクラクフまで夜行列車で行くかぁ、2日かかるけど、とか、ハンガリーブダペストからクラクフに1日かけて電車で、とかあれこれ考えていたのだけど(鉄旅傾向が見え隠れ)、関空からブダペストIN、モスクワOUTだと、フィンエアーが比較的安くて時間帯も便利かなぁというところから、ヘルシンキにも寄ろう→いやバルト3国がいいよ(夫の弟情報)と一気に旅程が固まった。

こんな成り行きで、あまり考えずに行って感じたのは、奇しくもポーランドとバルト3国は、共にドイツとロシアに挟まれて、翻弄された歴史を持つ国だということ。
こんなことなら、フィンエアーではなく、ルフトハンザ航空でドイツのフランクフルトから入るんだった。

駆け足だったけど、何カ国か回ると、同じモノ、違うモノが見えてきて面白い。


ワルシャワの駅前にそびえ立つ文化科学宮殿。
四角くどっしりとした石造りのビルは先が四角のままだんだん細くなっていく。42階建て、237メートル。夜にはライトアップされる。
ソ連の設計でソ連の労働者が建設し、1955年に完成。ゆえに「スターリンの贈り物」と言われている。ソ連の威光を象徴していて、景観も乱すので、市民にはずいぶん嫌われたらしい。

街を睥睨して、唯一そびえ立っていたのも今は昔。開発がめざましく進むワルシャワは、駅前に高層ビルがにょきにょきと建ち、とんがりビルと肩を並べる。旧市街の近くにもガラス張りの近代的なビルが建っていて、いかついけど石造りのとんがりビルがレトロに、旧市街の雰囲気に近く感じるほど。

このとんがりビル、リーガでも、旧市街と駅を挟んで反対側に建っているのを、教会の塔に上った時に見た。せいぜい4、5階の建物が並ぶなか、ぽこっと飛び出している。

余談。リーガの教会の塔は72メートルのところまでエレベーターで上れるのだけど、高所恐怖症の夫はずっとへっぴり腰で私にしがみついていて、周囲の男の人に失笑されたり、ファイト!と励まされたりしていた。

そして、本家本元のモスクワにはとんがりビルが7個あります。
その名もセブン・シスターズ
モスクワは大きな街だけど、景色の先にたまにとんがり頭がのぞく。丘の上にあるモスクワ大学は土台部分の横幅が広く、とんがりも四隅に付いている。東大なんかメじゃないロシアのエリート養成校だそうです。

そのうちの1つ、外務省の建物の真下まで行ってみた。近くでみると、威圧感がハンパない。高さ、大きさだけじゃない。建物の形、壁肌のニュアンス、トータルで。縦の線を強調しているから、「スターリン・ゴシック」といわれるのも分かる気がするけど、ゴシックに思い入れのある人たちからはイヤがられるらしい・・・。

扉には紋章のレリーフがついている。よくみると紋章は1つずつ違うと先輩に教えてもらった。
星(五芒星)のまんなかに、組み合わせた鎌と鍬を置き、周りを小麦の穂が囲む。これが基本デザインで、あとはブドウや綿花、油田があったりと遺跡のような景色がバックにあったりと15共和国それぞれのお国柄にあわせてアレンジしたもの。

とんがりビルの中央、ふつう時計が付くようなところには、ソ連邦共通の紋章・・・地球の上に鎌と鍬を置き、周りの小麦を15のリボンで巻いてある石造りのレリーフがどーんとあった。

バルト3国で、「忌まわしき過去の思い出」としてソ連が扱われるさまを見たあとにモスクワに来ると、街中に普通に、ソ連を示すものがあるのでギャップを感じる。建物のあちこちにCCCP(ロシア語でソビエト社会主義共和国連邦の頭文字)の文字や紋章があるし、地下鉄の駅にある労働を尊ぶ絵なんかもそう。ソ連から独立した国々では紋章やCCCPの文字を建物から削ったりしたそうだけど。

しかもこのとんがり頭、モスクワで最近建てられる高層ビルでも、似せた形のものがあったり、近代的なビルの上にぽこりと乗っていたりするらしい。
川を遊覧線に乗った時、確かに1つ見た(右)。「ロシア人がもともと好きなものをスターリンが体現したんじゃないかと思える」と先輩。大きいことはいいことだ、強いモノが偉いんだという風潮はけっこうあるそうです。よくもまぁ共産主義なんか出来たものだ。だから出来た、のか?なんなのか。

装飾的なとんがりビルとひきかえ、ソ連時代に建てられたという集合住宅は実用一辺倒。コンクリート真四角で平らな壁にはめこみ窓がならび、無機質な感じ。ソ連ワルシャワの市街、バルト3国の郊外で見かけた。

威圧(のための装飾)と合理が共にある。
人々を合理のなかに押し込めるには、威圧が必要?
ここらへんから、不可解は募っていく。