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「いなほ」の旅

 1月18日号「コメを食う」特集の取材で昨年12月、秋田〜山形〜新潟とその名も「特急いなほ」で巡った。車窓には刈り取り後の稲の株が並ぶ田んぼが続く。ちょうど今季初の寒波が到来し、秋田は横殴りの雪だった。
 秋田県大潟村で生産者の1人に尋ねた。「普段は何を食べていますか」。編集部内で「コメ農家は家族用と出荷用の田を分けていて、自分たちはうまいコメを食べている」という声があったからだ。その方はこう答えた。「中学生の時に大潟村に移るまで県内の山間地で暮らしていた。コメをうまいとは思わなかった。売り物にならないクズ米だったから」。売れるものは現金に換え、出稼ぎも多かった。今は、商品と同じ有機栽培のコメを食べている。もちろん地域差、時代差は大きく、だから前述の状況はないとは言えない。
 東京にいると、「大事な食べ物を作っている農家」などという感情は一端で、むしろ「補助金もらって左うちわ」というようなルサンチマンも感じる。逆に生産地では「輸入など不確実。農家がなくなれば国民は飢えるのに、今は分からない」と反発も漂う。
 このような感情的なすれ違いではなく、食料や農村、農業に対して、より現実的な認識を共有できないものだろうか。

(『週刊エコノミスト』2011年1月25日号編集後記)